漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
14.
泌尿器、生殖器の疾患
(
更年期障害を含む
)
文献
井上雅晴. 乳腺症の漢方療法 -四逆散について-. 漢方医学 1990; 14: 132-6.
1. 目的
乳腺症の治療薬としての四逆散の有効性を評価する 2. 研究デザイン
ランダム化比較試験 (封筒法) (RCT- envelope)
3. セッティング
日本赤十字社医療センター乳腺外来 4. 参加者
1988年7月から1989年6月までに乳房診、超音波検査、マンモグラフィーの所見から
乳腺症と診断された220名
5. 介入
Arm 1: 四逆散群 ツムラ四逆散エキス顆粒7.5g 分3 111名
Arm 2: 桂枝茯苓丸群 ツムラ桂枝侠苓丸エキス顆粒7.5g 分3 41名 Arm 1: Arm 2=3:1に割付。
4週間後に第一次効果判定を行い、この時点で症状が完全に消失している症例は治療終
了、やや改善傾向が見られる症例にはさらに 4週間同じ薬剤を投与した。全く改善傾
向が見られない症例には穿刺吸引細胞診を行い,悪性でないことを確かめた上で,Arm
1には桂枝茯苓丸を,Arm 2には四逆散を投与し、8週間後に最終効果判定を実施。
6. 主なアウトカム評価項目
食欲、便通、暑がりか寒がりか、冷え性の有無、月経、ホルモン剤の有無、舌診、腹
診等により実証、中間証、虚証に分類し、乳腺症の症状である、乳房痛、乳腺腫瘤の
症状の変化について有効、無効の判断を患者の訴えを基準に判定し、比較検討。
7. 主な結果
脱落例68名。四逆散と桂枝茯苓丸の間において有意差を認めない。
8. 結論
明確な結論は出ていない。 9. 漢方的考察
乳腺症は、駆オ血剤が頻用されるが、肝気鬱結の一症状と考えられている乳房痛など
とも症状が重なるので柴胡剤の一つである四逆散も重要である。 10. 論文中の安全性評価
有害事象は認められなかった。 11. Abstractorのコメント
本論文は、桂枝茯苓丸や桃核承気湯、当帰芍薬散のような漢方的にはオ血治療の処方
が主流であるのに対して、系統の違う四逆散が有効かどうかを調べたものである。こ
のトライアルの比較コントロール群として桂枝茯苓丸が置かれているが、桂枝茯苓丸
の有効性が確立されたわけではないため、非常に分かりにくい結果となっている。ま
た、著者が主張する治療の選択性を広げるという視点から四逆散を検証するのであれ
ば、それぞれの適用についてもう少し深めた続報を待ちたい。 12. Abstractor and date
中田英之 2009.1.10, 2010.6.1